富山の実家の近所にアニメキャラが来た その1 -黒部宇奈月温泉駅~宇奈月温泉-
はじめに
富山県。
都道府県人口ランキング37位(令和二年国勢調査)の、北陸の県である。
ところで、富山県というのは呉羽山を挟んでざっくり呉東(ごとう)と呉西(ごせい)という地域区分が存在している。
富山県第二の都市・高岡市を中心とした呉西は旧加賀藩に飛び地なしで属する地域ということもあり1、かの石川県金沢市との文化的なつながりが大きく、高岡市には古くからの町並みが残った歴史を感じさせるスポットなど、文化的な観光地も多い。
また、呉西は富山県下随一の漁業地域である氷見市も有しており、「氷見の寒ブリ」と言えば県外にも轟くブランド力を有している。はっきり言って、県外に名が売れている富山県の文化というのは、どちらかといえば呉西の存在を強く感じさせるものである。
一方の呉東は、県庁所在地の富山市が中心となっている。
富山市は富山県のちょうど中央に位置していて、平成の大合併で山間部の町村を取り込んだ結果、富山県を分割するような巨大な市域となっている。つまり呉東とは言うものの、富山県西部の呉西と、富山県中央の富山市+富山県東部の呉東、というような地域である、というのが正しい。
そして何を隠そう、私は富山県でも呉東の、そして富山市でもなくもっと東の新川地域の出身であった。
もちろん呉東にも有名なスポットはある。立山室堂、アルペンルート、黒4ダム……そう、何を隠そう、山ばっかりなのだ。県外で「黒部市出身です」と話すと、99%の確率で黒部ダム(黒四ダム)を連想して「ああ、あの山の方の……」と言われる。確かに黒四ダムは黒部川流域にあるのだが、長野との県境にあって、実は訪れるのも長野方面からのほうがアクセスがいい、みたいな感じの場所であって、黒部市民にとってそこまで馴染み深い場所、とはいい難い。
山から流れ海へと至る黒部川扇状地を市域とする黒部市(特に、旧黒部市域)は、自分が特に海沿いの育ちということもあり、どちらかと言えば海よりの市という認識だ。正確には、海と山に挟まれた扇状地の平野部がある、というのが正しいか。
ところで、私が呉西への文化的劣等感を抱いている背景として考えられることの一つには、やはり富山県がアニメで取り上げられる際には西のほうが多い、ということがある。
現に、富山県が舞台となったアニメを振り返って見ると、やはり西が多い。城端のtrue tears、高岡のゆるゆり(大室家)、射水のペルソナ 〜トリニティ・ソウル〜……。そもそも富山のアニメといえばP.A.Worksというアニメスタジオのことを無視できないが、PAがあるのが南砺市なので、やっぱり地域的には西という感じが強い。更には、私が敬愛する、藤子不二雄先生が少年時代を過ごしたのも高岡である。
一応、P.A.Worksの東部アニメといえば『クロムクロ』があるのだが、あれも黒四ダムが主な舞台なので、先述の通り山の方となる。いやあるじゃんな、新川つってもさ、海に面しているところがさ……。
そんなこんなで、アニメで出てくる富山といえば呉西、富山県に来訪する話が来たらちょっと「オッ」とは思うけれども、ぶっちゃけ呉西のことそんなには知らないんだよな、とか思いがちであるが、

いや、ガチの近所来とる!!!
驚きのあまり、末茶藻中公式サイトのエッセイコーナー禁じ手の一つ「デカいフォントを使う」をここで解禁してしまった。
ということで、TVアニメ『ざつ旅-That’s Journey-』でまさかのアニメキャラが何もない近所に来とったんで、このあたり出身の私がその足取りを簡単にたどると共に、この地域には何があるがかということを簡単に解説していきたいと思う。
一応今まで黒部市出身であること自体は非公開情報だったのだけれど、アニメに出たし、ということでガンガン地域の話をしていく。
黒部宇奈月温泉駅
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黒部宇奈月温泉駅(アニメではJRが消されている)
北陸新幹線の開通は富山県民にとって例外なく大きなニュースであったことだと思う。今まで東京行きといえば電車で行けば越後湯沢まで特急で行って上越新幹線乗換で東京へ行くか、あるいは高速バスで池袋発着、みたいなルートが基本であった。その微妙に面倒くさいルートが北陸新幹線によって東京が一気に近くなり、富山県に関東方面へのアクセスの良さと文明をもたらしたのである。2
ついでにその駅が黒部市にできるというのもアツい。最速の新幹線の「かがやき」は止まらないが、それでも「真高岡」「富山」そして「黒部宇奈月温泉」という並びは、明らかに他二つの都市格に比べて劣る黒部市民的には、少し不思議な感じがするのが正直なところである。ちなみに新川地域の中核の市といえばどちらかといえば魚津市という認識があるが、平成の大合併で市域が変更しなかった魚津市に比べ、旧宇奈月町を合併した黒部市は、現在は人口的にはほぼ同じのようである。
まあ駅の位置というのは富山-糸魚川の中間という地理的な部分、宇奈月温泉という観光地へのアクセス、または黒部を裏から司っている巨大工場のYKKへのアクセス、そういうものを加味して決められたのだとは思う。
地元に新幹線の駅ができたら周辺が栄えるのかなぁ、なんて少々思っていたのだが、なにもないところにバカでかくて立派な新幹線駅ができただけで相変わらず周辺にはなにもない。ざつ旅御一行が駅に降り立って「何もない」などと抜かしていることに反論の一つや二つしたいところなのだが、実際何もないので仕方がない。
横を地鉄(富山地方鉄道)駅の新黒部駅があるので、ここから黒部市の市街地や宇奈月温泉へとアクセスできる。しかしながら、基本的に圧倒的車王国の富山県において、新幹線駅を訪れる足もまた、車だ。
実際調べてみると新黒部駅の乗降数ランキングは地鉄内でも実に61位ということらしい3ので、あんまり利用されている駅ではない(富山に行きたい人は黒部宇奈月温泉駅で降りないだろうし)黒部宇奈月温泉駅を利用する人はだいたい家族に送ってもらってロータリーで降りるか、あるいは併設されているバカでかい無料駐車場に車を止めて新幹線に乗るか、という利用が多いだろう。あと駅の近くにはレンタカーもある。
改めて、いくつかアニメ内のカットと写真を比較していく。
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来訪時期の差かもしれない。昔あったかは……よく覚えてない!
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ざつ旅ステッカーも貰える(※傾け角度を間違っている……)
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さて、ここでせっかくなので、この私が渾身の黒部宇奈月温泉駅の見どころを紹介しよう。

黒部宇奈月温泉駅渾身の観光スポットその1「トロッコ電車のモニュメント」
アニメにも登場。厳密には向かいの新黒部駅に設置してある。黒部市(旧宇奈月町)随一の観光スポットである黒部峡谷のトロッコ電車をアピールしていると思われる。トロッコ電車はここにはないので諦めてそのまま宇奈月温泉駅まで行って欲しい。

黒部宇奈月温泉駅渾身の観光スポットその2「黒部の名水」
湧き水の給水スポットがある。コップもあって便利。黒部市は全国でも有数の名水処で、そのあたりに湧き水が結構ある。まあぶっちゃけこの清水(湧き水)を観光スポットとするのはどうなんだろうって感じなんだけど、補給ポイントがたくさんあって困ることはないので実際便利。私もこの日は薬を飲むためにここを利用した。
ちなみに、旧JR北陸本線、現あいの風とやま鉄道の生地駅にも駅前に湧き水が出ているので補給し放題だったりする。
……以上!
なにもないんですね、ここ。
ちょっとしたおみやげ屋さんやコンビニはある。先述の通り「地域観光ギャラリー」にも小さな売店がある。コンビニにも微妙に地域のものが売ってるのでちょっと面白い。いわゆるジェネリック萩の月的な富山銘菓の甘金丹とかもある。上田麗奈さん(富山県出身の声優)も褒めていた記憶があるので、間違えはないお菓子でオススメ。
今ならざつ旅ステッカーもここで貰える! まだいっぱいあるらしくて「3枚までいいよ~はいじゃあ3枚ね~」って感じで3枚頂いてしまったので3枚ある。

ざつ旅ステッカー(3枚)
ざつ旅一行だが、ここから徒歩で南下して電鉄黒部駅まで歩いている。真横の新黒部からまさにこの電鉄黒部まで電車が出ているので、このルートを通ったのは結構ガチで謎である。
このあと二人はその地鉄の電車の撮影をしに横道に逸れている。電車の撮影をするために駅を離れた結果、電車に乗れずに1時間待ち、というような状況になったので「じゃぁせっかくだし同じ時間待つよりは歩いてみるか……」などと動いている、というのが自然な流れだろうか。
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ここの地点へ行くにあたって、先程の駅から出た道から逸れて小道に出て、そこから再び少し駅に近づいていて、進路としてはUターンのように動いていることになる。撮影スポットを探してぶらついていることが伺える。
ちなみに奥に見えるのは、銀盤酒造のタンク。関東でも、銀盤の日本酒は時々見かけることがある。
なお、全カットきっちり回収するつもりだったのだが、思いの外取りこぼしがあった。「ざつカット回収」ということで、ご容赦いただきたい。

ちなみに、このあたりからは、近くの山に設置されている「名水の里 黒部」のモニュメントが見える。市内出身者にとっては馴染み深い文字である。「何のハリウッドぶり?」などと思うが、昔からある。
ちなみに文字のモニュメントが置かれているのは宮野山という丘陵地。宮野山は運動公園だとか、ちょっとイベントができる広場とか、あるいは集合墓地や仏舎利塔があったりして、市民としては何かと訪れることが多い場所である。
ざつ旅一行はこのまま黒部の市街地へと向かっているところだが、私はここから宇奈月に向かったので、今回はその順序で書いていこうと思う。今回は折りたたみ自転車を輪行してきたので、このまま宇奈月まで走ってみる。

宇奈月温泉
黒部宇奈月温泉駅から宇奈月温泉までは約13km。ほとんどは平地だが、次第に山らしい風景になってちょっと登りが発生する。それほどきつい道中ではないが、ナメてかかっていたら思ったより疲れた。

しばらくはずっと見通しの良い田園風景が続く。
黒部宇奈月温泉駅は、平成の合併前の旧黒部市の中でもかなり旧宇奈月町寄りの方にあるので、ちょっと進むともう旧宇奈月町の町域となる。現黒部市において、山の方の市域はだいたい旧宇奈月町の部分である。地名としての宇奈月町は「黒部市宇奈月町◯◯」といった形で残っている。

宇奈月ビール館の横を通る。
こじんまりとした道の駅の売店や、黒部市歴史民俗資料館が併設されている。
すいすい走って宇奈月温泉駅のあたりに到着する。この日は天候が不安定で晴れたり雨が降ったり、という感じの空模様だったこともあって、黒部宇奈月温泉駅以上に"ざつ"になってしまったのだが……それはともかく、再びアニメ登場カットといくつか比較してみよう。
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もう見ているとわかるが、完全に宇奈月に来たことに満足していて、カットを合わせる気がなくなっていて不甲斐ない。ただ同じところに行ってみただけの人になっている。ざつ旅一行が宿泊した「ホテル黒部」ぐらいは撮っとけよ、と自分でも思う!
身も蓋もないが、宇奈月温泉のあたりはそこまで馴染みがあるわけではないので、普通に地元の私よりも温泉好きのアカウントさんとかの方が詳しいと思う。
宇奈月温泉では、宇奈月の観光案内場「湯めどころ宇奈月」にてざつ旅のステッカーが貰える。外観を撮影することをすっかり忘れているが、アニメでも登場している施設なので、アニメキャプだけ掲載しておく。
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湯めどころ宇奈月に入ってみると、思ったよりオタクで驚く!
私の地元って、もうこんなにオタクになってたんだ……。
オタクなのは自分だけかと思っていた。
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ざつ旅ステッカー
黒部峡谷は個人的に大好きなスポットだ。富山県については自虐を込めて「何もないよなぁ」などといいがちであるが、そんな中でも黒部峡谷は自信をもって素晴らしい場所だと思っている。
鋭角にえぐられたような鋭い峡谷の間を流れる黒部川は、海へと注ぐ下流の広々とした姿とはまた少し違った美しさを見せ、そして真っ赤な橋をわたっていくトロッコ電車の姿も、実に風情がある。私自身は黒部市でも海の方の生まれなので、山の風景には非日常感を感じるのかもしれない。そのうちいつか、改めてしっかり観光に訪れたい場所である。


やまびこ展望台からの景色
ということで、思ったより長くなってしまったので、黒部市街~生地編はまた次の記事で。
黒部市の田園~山部分から、次は海へと進む。

5月、黒部宇奈月温泉付近にて。
水田と立山連峰は、私にとって故郷の原風景と言える。
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本記事の画像は全て、以下作品より引用。
『ざつ旅 -That’s Journey-』 ©石坂ケンタ/KADOKAWA/「ざつ旅」製作委員会