オン・ユア・幕張(蓮ノ空2nd千葉公演と、幕張メッセの思い出)


オタクであれば誰もが一度は向かう場所。それが我らが千葉県が誇る巨大施設「幕張メッセ」である。

この幕張メッセというのは基本的には展示場としての使用が多く、多種多様なゲームが展示される「東京ゲームショウ」や、フィギュアやプラモデルなど立体物を扱った「ワンダーフェスティバル」などの大規模な催しが開催されている。他にも、展示場をいくつものステージに分け、国内外のミュージシャンが集まる大規模なクラブ系フェスイベント「SONICMANIA」もここで開催される。また、9000人ほどが収容できるイベントホールもあり、ちょっとした規模のコンサートやライブを実施することもできる。
幕張メッセとは様々なオタクイベントやオタクじゃないイベントが開催される、巨大複合施設なのである。あと最寄り駅の海浜幕張駅には巨大施設の「イオンモール幕張新都心」とか「三井アウトレットパーク幕張」とかもある。千葉舐めんなよ!

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三井アウトレットパーク 幕張

幕張メッセのいいところとしては、やはり我々千葉県民にとってはアクセスの良さ、もとい悪くなさが挙げられるだろう。実際私もやろうと思えば自転車で移動可能なぐらいのところにあるので、東京/神奈川/埼玉住まいの関東民が「遠い」「遠すぎる」「本当に遠い」などと様々な理由の怨嗟の声を吐きながら幕張メッセにアクセスするのを横目に、数少ない千葉県民としてのイベントアクセスのメリットを享受している。
とはいえ、自転車で移動可能なぐらいな距離にも関わらず、実際は何度も乗り継ぎをせねばならず、千葉の者としても「アクセスが良い」とはいい難い。今はイベント時は、総武線と京成線でアクセスできる幕張本郷駅からバス移動で幕張メッセに向かうことが多い。正直、自転車で向かうのとそんなに時間の差はないと思う。

以上、幕張メッセのいいところ終わり。

続いて、幕張メッセの悪名高いところといえば、まず第一に千葉県民(あるいは、真の勝ち組の京葉線ユーザー)以外からのアクセスが非常に悪いというところだ。しかしながら、この会場の悪いところは他にもある。
幕張メッセのホールを本来の使い道である展示場、あるいは分割のステージとして扱っている分にはいいのだが、2~3万人ほどを収容する巨大なライブホールとして、この展示場をぶち抜いて使用されるというケースがある。これが非常に曲者で、元々が展示場であるから傾斜がまるでなく見事なフルフラット会場なのである。最後列となるものならばステージの演者どころか演出もまともに見られないという、なかなかないレベルの待遇を受けることになる。しかも場所によっては視界を遮る柱まである。
更に音楽用の施設でないから音響設備もイマイチで、ヘタをするとまともに歌が聞こえないだとか、前後の設置のスピーカーで音の速度がズレて気持ち悪い、みたいなこともあったりする。音楽用のホールでないスタジアムなどの巨大施設の音響の悪さは、まあどこでもつきまとう話かなとも思うのだが、前述のフルフラットとも相まって幕張メッセは正直言えばあまり歓迎したくない場所、という印象が強いのである。

実際に私も幕張メッセの後方席にいて、なかなかないレベルの待遇を受けたことがある。忘れもしない『アイドルマスターシンデレラガールズ 3rdLIVE シンデレラの舞踏会』の会場がこの「幕張メッセ 国際展示場 展示ホール9-11」だったのである。
アニメを見てシンデレラガールズを知り始めた私は、チケットが一般発売されているのを見てふらっと応募したところなんと当選したため、この会場に足を運ぶことになったのだった。一般販売の席であるからかなり後ろで、それこそ本当に何が起こっているのかわからない。3色の光がスクリーンに映し出されているのだけはギリギリわかる、みたいな感じであった。演出を受けて会場のオタクたちが爆発的に湧くところを目の当たりにして、何かが起きていることはわかったのだけれど、何が起こってるのか大抵はしばらく理解できずにラグがある、というぐらいの状況であった。
翌日、Day2をららぽーとTokyo-Bayの映画館にてライブビューイングで見て、連番者と「ライブビューイングだと見やすくていいね」と話をしたことを覚えている。

では、このライブが悪い思い出だったのかといえば……はっきり言って、全然そんなことはない。というか、むしろめちゃくちゃ良い思い出だ。ライブ自体は行ったことがあったものの、オタクのライブに足を運んだのはここが始めてだったので、すべてがわからないことだらけて、そしてすべてが新鮮であった。まずコールというのがよくわからなかったので、周囲のオタクが何やら叫んでいるのを見て、こういうノリなんだ! と見様見真似でライブに参加しようとしていた。始めてのオタクライブで、夢中だったと思う。
ライブというのはその場の熱気や雰囲気込みで楽しむものだと思っている。この時の、会場でほとんど何も見えなかったday1と、映画館でのんびり見られたday2、どちらが印象深いかと言われたら、やっぱりday1の方なのだ。あの時披露された『S(mile)ING!』『shabon song』『夕映えプレゼント』……どれも素晴らしく記憶に残っている光景だ。


さて、2024年、実に6年半ほどぶりに幕張メッセに再びライブを見に行くことになった。『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd Live Tour 〜Blooming with ○○○〜』の千葉公演が、この「幕張メッセ 国際展示場 1~3ホール」にて開催されることになったのである。

めちゃくちゃイベントに通った、というほどでないにしろ、この数年でアイマスだったり、そうでない中小のコンテンツライブ、はたまたCDのリリースイベントとかそういうものだったりと、私も色々なオタクイベントに足を運んでいた。私にとってラブライブ! の現場は始めてではあったのだが、あの頃のシンデレラの時に比べればもう慣れたものである。自然と跳ねたり声が出たりするし、一方で内心「いやここでクラップはそんなに気持ちよくないでしょ」とか「今は演者の声を聞きたいからそんなにコールしないぜ」とか、まぁともかく自分なりのスタイルでライブを楽しむようになっていた。
当時のフレッシュなオタクイベント1年生の時に比べたら、結構心構えが変わったな、と思う。

そして久々の幕張メッセの展示場ぶち抜き会場は……やっぱり、あまりいい環境ではなかった。だだっぴろい平面にパイプ椅子がギチギチに詰められている光景を見て、私は「ああ、懐かしいな。あの幕張メッセの会場だ」と思った。

今回は会場の前後で言えば中ほどの位置だったので、前のシンデレラの時に比べればかなりましだったような気がするのだが、そのぐらいには前方の位置でも左右のポジションによってはかなり見辛いロケーションになってしまう。2日目はステージ中央よりだったので、幕張的にはまぁ結構いい席だったと思うのだが。『飴色』のカメラ演出とかが素晴らしくちゃんと見られたし。
そしてやっぱり音響がイマイチよくない。少なくとも音楽鑑賞という体験では全然よくなかったと思う。音響はコンテンツ毎の調整の結果ではあるのだが、やっぱりこういう会場だと難しいんだろうな、ということを伺わせた。

ではそんな風にちょっとスれてオタクライブのあれこれを理解して、改めて目の当たりにした幕張メッセという過酷な会場でのライブであったが……まぁこれについては言うまでもないだろう。本当にめちゃくちゃ良かった。

2023年10月ごろから2024年4月の"今"に至るまでの物語をライブで再び再現する構成のステージ。『ツバサ・ラ・リベルテ』『Link to the Future』『抱きしめる花びら』という重要曲を、衣装替えやステージの演出で見事に再現し、観客の前にその時々の時間を改めて顕現させてみせた。更にそれを取り巻く『Dear My Future』『飴色』『ミルク』などの楽曲群。夏から秋を経て、そして冬へと至ったことの振り返り。そこに表現されていたのは、とにかく絶え間ない変化の繰り返しであった。ラブライブ! という大会への挑戦。そして、102期生である沙知先輩の卒業という別れ。ほんの半年ほどで蓮ノ空を取り巻く状況が激変したことを、数時間のステージで改めて思い知らされたような心地がした。
私が蓮ノ空を追い始めたのは12月なので、少し実際は短いものの、私が追った期間がちょうどライブとして再現されていたと言えるだろう。とてつもないぐらいの密度だな、と思った。

そして、自分でも信じられないほどに好意的な解釈だと思うのだが、あの横にばかり広い展示場の場で『ツバサ・ラ・リベルテ』を聞いた時に、締りなく拡散していく音の広がりと共に、彼女らがどこまでも先へ先へと進んでいくイメージを想起した。そして同じ高さでペンライトを振っている私たちは、一面の会場の地に咲く光の花々であって、自分がその一部になっているような気持ちになった。そして我々も同じように、ずっと広がっていくのではないか、と思えた。
スピリチュアルがすぎる、と言われても受け入れる準備がある。ライブというのは、時に神秘的な体験をもたらすものだと思うからだ。

蓮ノ空千葉公園の2日目のライブの日。正面からステージを見ていた私の目に最初に焼き付いたのは『Dream Believers』のラスト、6人とともにスクリーンに映し出される「蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」の文字であった。 そして本編が終わり、そこでは出られなかった新入生キャストがアンコールのタイミングでゲストとして登場して、再び『Dream Believers』が披露される。今度は9人が「蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」の文字を背負った時に、もはや他に言葉は必要なかった。過去の時間の先の今に、不可逆の変化がもたらされたのだ。

2日目の最後に、沙知先輩の声で「みんなにとっても忘れられない思い出になったんじゃないかな」というアナウンスが流れた時。私は思わずペンライトをグリーンに光らせて、そして急に涙が流れ出して、そのまま立ち尽くしてしまった。
時間の変化とともに、去りゆくものがこの場所から離れていくことを、この時私はライブに参加するという当事者性を持って、初めてはっきりと感じることができたのかもしれない。

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〜Blooming with ○○○〜

私にとって幕張メッセの展示場というのは、初めてしっかりとオタクライブに参加した思い出の場所だった。そんな場所で私自身の変化を振り返りながら、この場で蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの"今"を噛みしめることになった。悪くない気分であった。
あの時の私の、何も見えなかったような会場の思い出が、今なお素敵な思い出として心に留まっているように。そして蓮ノ空の彼女たちの様々な苦難も、素晴らしき"今"によって良き思い出となっているように。これらを同列に感じるのもおこがましいとは思いつつも――しかしながら、彼女たちも私たちも、誰しもの過去のことが、全て心の中のアルバムに収まっていくのだろうと思った。それは、不思議なぐらいに、満たされた心地だった。

きっと私はこの後また幕張メッセに来る度に『アイドルマスターシンデレラガールズ 3rdLIVE シンデレラの舞踏会』のこと、そして『ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd Live Tour 〜Blooming with ○○○〜』のことを私は思い出すのだと思う。そんな特別な幕張メッセへの思い出を込めて、幕張メッセ、そんなに悪くない会場じゃないか、と今ならそう言っても、もしかするといいのかもしれない。

まぁでも、可能であれば、次はKアリーナとかでやりましょう。千葉からだって駆けつけます。

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蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ