一目で恋をしちゃった ラブライブ!のいいTシャツ


オタクは比較的身だしなみに拘らない、という風潮がある。例えばその理由として、ファッションにかける金額をアニメやゲームに使っているからである、と言われたりする。
そもそも関心が本当にないだとか、各々拘っていないオタクの方々にそれぞれ理由があると思うのだが、個人的な理由で言えば身だしなみのイマイチさの理由に、この金額の問題というのは確かに直結している。何も高い服を持っていないというわけではない。これは「高い服を持っている」という反論ではなく、その前段階の問題であるからだ。基本、オタク(私)は抱き枕カバーよりも高い布を持たないし。

で、私が思うに、この身だしなみの原因の一つというのは、服の耐久年数を見誤っているのだと考えている。服というのはどうにも「着て/洗濯をして/また着る」このサイクルを経ていく上で、段々と繊維だとか色々と傷んでいって、気がつくと耐久年数を超えているものらしい。そして私はオタクなので、服の耐久年数というのを見事に見誤っていた。気がつくと◯年1ぐらい新しい服を購入せずに過ごしていたのだった。
私は考える――最後に服を買ったのはいつだったか? あのアニメのイベント、あのライブの時……いや、オタクイベントで購入できるオタクの客席衣装(アニメやバンドのTシャツ)の話は一旦置いておこう。今話しているのは、それ以外の服の話である。もう一度考えて――いや、購入、してないな。そんなに何年も!?

気がつけば、それなりに年季の入った衣服だけが、哀愁を帯びてクローゼットに鎮座していることに気がついた。

そう、衣服というのは、ある程度サイクルしていく必要があり、故に定期的にこの「服飾費」なるものの出費を受け入れなくてはならないのだ! あと、服を買い替える理由としては、なんか流行の移り変わりとか、そういうのもあるらしい。
抱き枕カバーの材質の進化以外の布の情報を仕入れていなかった私だったが、まずはこの定期的に衣服に金を掛ける、というシステムを受け入れなければならなかった。

さて、そんな私であったが、特に理由があったわけではなく、もうちょっと身だしなみをマシにしたい、という気持ちが最近生まれてきていた。だって声優さんを見に行く時なんかも、身だしなみがマシなほうが気持ちがいいし。
なので、それでは、じゃあ服を買うか……と思った時に、困ることがあった。「服を買う服がない」というお決まりのネタではない。今の時代、ネットショッピングで外出せずとも衣服なんぞいくらでも購入することができる。今ある服も、かつてネットショッピングという、サイズ感ガチャを乗り越えて(あるいは、やや失敗したがいくらか妥協して)入手した産物である。本当であれば絶対試着をしに外へ出た方がよい。

話が逸れたが、ずばり一番困るのは「何の服を買うか」ということだ。まあ一応、ファッションの情報というのも、昔からネットにだって結構転がっている。家にいてその気になれば5分で調べられるこのネット情報を参考にすることは、確かに実際そこそこある。しかし、私はネットのファッション情報というのを、そこまで信用はしていない。というのも、ネットのファッション情報というのは「すべきではない」という禁則事項ばかりが独り歩きして、本当に知りたいことがイマイチ得られない、という経験があるからだ。「チェックシャツはオタクらしいからやめろ」「黒はオタクらしいから……」そんな感じで、結局どう振る舞えばよいのかわからない。ファッションというのは結局のところ総合のコーディネイトなのに、である。
ちなみに、私は全体の調和を何も考えなかった場合「バランスを取りたいから」などと考えて、違う色味の服ばかり増やす傾向があるのだが、ぼーっとしているとトリコロールカラーみたいなカラフル人間になってしまう。ガンダムはカッコいいかもしれないが、人間にはハードルが高い。これは逆にバランスが悪いということに気がつくまで、そこそこ時間がかかってしまった……。

ともかく、ではどうやって情報を仕入れるのか、と考えると、そこはやっぱりファッション誌である。しかも今の時代、別に本屋で吟味して購入して……とやらずとも、雑誌のサブスクリプションサービスという極めて便利かつリーズナブルな手段がある。2
雑誌というのは、値段のライン、対象の年齢、装いのジャンルなどなど色々な傾向があるので、実際一気にまとめてチェックできるのはとても便利だ。雑誌一つ一つに「正直このジャンルはあんまり好きでない」「紹介されてる衣服が全部高すぎる」「内容はともかくなぜか頻繁にダジャレが記載されていてノリが腹立たしい」などの不満が少しずつあっても「これはちょっといいかも」と思った必要な情報だけを抽出することができる。 私は網羅的にサブスクの雑誌群を眺めながら、ちょっといいかもな、と思った装いをスクリーンショットで保存して、個人的にいつでも見返せるようにしている。

こうしてちゃんとファッション情報を仕入れるようになって、いささかファッションそのものへの意識というのも変わってきた。
ファッションというのは、見せたい自分を見せる、ということであるのが改めてわかってきたのだ。

服を買おうとするとき、色々なメーカーやブランド、そしてアイテムがある中で、人々は自分がしたい装いを――それも、衣服という堂々と真っ先に人に目につくものを――チョイスすることになる。そこには当然、各々の美意識が絡んでくるはずである。
ここでの判断基準というのは何か。まず一つ、自身の体系にマッチしたサイズ感、あるいは全体的なシルエット、ちょっとした裾や袖や着丈の長さの差異、あるいは素材感みたいなものへの拘りがあるのだと思う(これについては、私は正直まだその審美眼が備わってはいないが)
もう一つは、こっちは結構わかりやすいと思うのだが、ブランドやアイテムの持つストーリーを好ましく思うか、というのがあるのだと思っている。衣服の情報を仕入れていると、結構こんな謳い文句を聞くことがある――「これは国産工場で作られたものです」あるいは「このアイテムは定番で伝統と歴史あるものです」あとは「この素材にはサステナブルなものが使われています」といった感じのものだ。こうしたフレーズは品質に直結しているみたいな期待ももちろんあるのだろうが、特に一番最後のものなんていうのは、ファッションの場で「なんのストーリーに乗っかるか」ということを実現できることが大きいのだと思う。
中でも特に、ヴィンテージや古着みたいなものは、背景のストーリーが価値に大きく絡んでいることが多い印象だ。その服がイケているかどうか感じるということには、色々な価値が絡んでくるのだ、と知った。

こんな風にファッションについて少しばかり勉強をしても、まあ正直なところ、まだまだ自分のコーディネートやアイテム選びのセンスがめちゃくちゃ改善したかというと自信はない。ファッション誌に掲載されてるものって高いものがやっぱり多いし。
ただ、自身の装いを意識するようになって、例えば休日にどんな格好をして出かけるか、みたいなことを考えるのが、結構楽しくなった。「人に自分がどう見られることになるのか」ということに対する意識が高まっていると言ってもいい。
たとえ見た目は変わらずオタクくんでも、その実私の中では美意識の改革が起こっているのだ。

そして、今そのモノの持つストーリーを好ましく思い、身につけてもいい! と感じるものが増えたりしている。
その一つとしてあるのが……

ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』である。

いや、実のところ、ラブライブ! ってめちゃくちゃカッコいい。スクールアイドルというのはカッコいいのだ。すべて自分たちでやろうというDIY精神、見せたい自分を見せるという自己実現のキラメキ、これらを包括して作品のテーマはインディペンデント精神に満ちあふれている。
特に私がハマった蓮ノ空は、移り変わる「今」の中で、受け継がれてゆく伝統の素晴らしさ、ひいては人と人との繋がりの力を描いていて、マジでめちゃくちゃいい話をしている。こういう物語を描くにあたって、感動的なシナリオだけじゃなくて、軽妙なコメディシーンを忘れずにやってるのもカッコいいんだよな。めちゃくちゃベテランなのにずっとコミカルなポップソングを作り続けてるカリフォルニアの名ユニット・Sparksみたいだ。

もちろん『ラブライブ!』というコンテンツは商業ベースで発展したものなのだが、半ヴァーチャルな『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』は配信やライブという用意されたコンテンツを、実際のスクールアイドルの彼女らが作り上げているというスタンスを、そのまま受け止めさせやすい構造になっている。すなわちコンテンツの持つインディペンデント精神を、強烈に感じさせるのだ。とにかく実態はどうあれ、こういうスタンスでいる、と提示されたものがカッコいいのだ。そういう価値観が素晴らしいと思っていなければ、作品の姿勢として打ち出されることはないからだ。
こうしたものは、ファッションブランドの持つストーリーとも、何ら変わりはないのではないだろうか?

そんな意識が私の中で高まった結果……プライベートで使用するバッグに、アクリルキーホルダーをつけるようになった。『ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の、日野下花帆さんのものである。今まではこうしたオタクアイテムを身につけることは頑なに避けていたのだが。

This is a moe

日野下花帆さんのキーホルダー(虹色に光ってかっこいい)

周囲の方が見たとしたら「萌え萌えキーホルダー付けてるとか、こいつますますオタクとして終わってきたな」と思われるかもしれないが、否、ここまで書いた通りに、私の自己の中ではむしろ逆の意識が働いているのだ! “萌え"って、かっこいいしな。
『ラブライブ!』は大量にグッズが出ているので、気がついたらTシャツだとかコインケースだとかが増えていたりする。気がついたら、全身『ラブライブ!』人間が順調に出来上がっていくことに、少々恐ろしさを感じるぐらいだ。

思えば、いわゆる推し文化なるものに懐疑的であった私は、この文化の興隆に伴ってオタク界隈で主流になりつつあった「周囲にアピールすること」というスタイルへの意義を感じていなかった。「好き」なる気持ちは、自己の中で大切にすれば良いのであって、見せびらかすものではない、と思っていたからだ。
今もそういう感覚というのはあるが、しかしそれとは別に、こうした見せつける文化への理解もにわかに少し深まってきたように思う。自らの好きなものを周囲に見せ「こうしたものが好きな私だ」と表現することというのは、なんと朗らかで、健やかなことだろうか! そんなことを思ったりするのだ。
これもファッションを知ろうとして、新たに感じるようになったことだ。

そのうち私がバッグに『スリーズブーケ』の缶バッジを大量に付けるようになることも、ひょっとしたらあるのかもしれない。もし万が一そうなったならば――今のところ予定は全くないが――こう思って欲しい。
「ああ、この人って『ラブライブ!』のことを、『スリーズブーケ』のことを本気でカッコいいと思ってこうなっちゃったんだ」と。そしてその時私は「服飾費」から缶バッジ代を捻出しているだろう。

This is a moe

©プロジェクトラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ

関連記事


  1. わずかながらのプライドと、具体的年齢を推測されないためにこの年月については申し訳ないのだが伏せさせていただく。 ↩︎

  2. しかも雑誌スクリプションサービスというのは、ついでにメガミマガジンとかも読める。ピンナップも見られる。 ↩︎